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何が俺をこんなに熱くさせる?

キャラクター考察が主食のオタク

操真晴人の精神の成長によるアンダーワールドの変化についての考察

※2014年に書いた考察を一部修正したものです。
 仮面ライダーウィザード/操真晴人が近年稀に見ぬほど好きなキャラクターでした。戦国MOVIE大合戦の完結編に大変感動したので、この際彼について考えていたことをまとめてみました。


物語冒頭の操真晴人

 中の人S氏はある雑誌でこう答えている。
「人間を形成するのに家庭環境はとても大事なもの。晴人は幼くして両親を亡くし、注がれるはずの愛情を知らずに育っている。」
 晴人は幼少時、両親と共に交通事故に遭い、自分だけ生き残ってしまう。その際、母親が遺した「晴人は私たちの希望よ。」という言葉が今の彼の支えだ。そして、両親が目の前で息を引きとった事が彼の絶望であり、希望をもらった瞬間だと劇中で語っている。
 その両親が亡くなった病室こそが操真晴人のアンダーワールドなのだが、ひとつ特徴がある。それは、劇中に出てくるアンダーワールドの中で唯一、“悲しい思い出”であることだ。本編で晴人が飛び込むアンダーワールドは全てそのゲートの幸せな色あせない記憶、瞬間である。実際、亡くなった父親との思い出だった凜子、魔法を信じていた幼い瞬平、大好きな姉・美紗との思い出だった真由など、全員がそうであった。しかし晴人はそうではない。これはもちろんだが、両親の死は晴人の幼心に植え付けられた強烈なトラウマであると考えられる。
 実際、初めてフェニックスと対峙し歯が立たなかった時、制止する凜子に対し晴人は「無理でもやらなくちゃ誰も救えないじゃんか!そんなの俺は嫌だ!」「誰かに俺の前で死なれるのが怖くてたまらないんだよ……。」と涙ながらにこぼした。S氏も「晴人は見ず知らずの人を必死に救うけれど、何か理由があるのかスタッフに聞いてみたら、ないと言われた。つまり、晴人は元々そういう人間なのかも。」と言っていたが……。
 “無理にでも自分の命を削って戦う”。言葉にすれば立派だが、人間としてはとても歪だと思う。何より、この時点で晴人にはそこまでして見ず知らずの他人のため戦う理由が見当たらないのだ。


操真晴人という人間

 孤児となってから魔法使いになるまで彼がどのように生活してきたか詳しくは語られなかったが、断片的に分かることを拾っていく。
 まずは小学校時代の恩師・熊谷先生。彼は晴人のことを「相変わらず、物分かりのいいフリをした頑固者だ。」と表現した。瞬平によれば「晴人さんは自分の事をあんまり話してくれない」そうだし、公式サイトでも「パッと見軽く見えるが、お調子者を装い本心をあまり見せないようにしている。」と紹介されている。
 ここから、晴人は独りぼっちになってから自分の悲しみや本心を隠すことで自己防衛をするようになったと考えられる。S氏も「大人になった今でも防衛本能が働いて、ある程度相手に合わせたり取り繕ったりする。勝手に身についたものだから仕方ないけれど、晴人にとってはそれが普通でも他人から見ればとても遠い人に見える。」と語った。
 しかし、そんな晴人に向かって「俺は何でも一人で抱え込んじまうお前の、希望になりたいんだよ。」と笑う熊谷先生。近すぎず遠すぎない距離で見守ってくれていた先生の回は、ウィザードの中でも屈指の神回に数えられるだろう。恩師に見せる晴人の笑顔は、どことなく幼い。

 そして、同じサッカークラブに所属し、共にプロを夢見ていた篠崎和也。
 プロ選手を目指していた事からおそらく晴人は幼少時からサッカーをしていて、かつ、彼の唯一とも言える娯楽だったと推測できる。しかも、他人と無意識に距離を取ってしまう晴人にとって親友にも近い和也は、かなり心許せる存在だったはずだ。そのままの関係を保てていたならば、晴人はもう少し孤独ではなかったかもしれない。
 しかし、それは起きた。偶然とは言えど、晴人が和也に選手として致命的なケガを負わせてしまった。初めて気を許した相手の希望を自ら奪ったことが、彼の心にどれだけ重く響いたのか。晴人は、逃げた。
 再会した和也はこう語る。「ケガの事は恨んでない。けど、勝手に姿を消した事が許せない。」
 夢を諦めずリハビリを続けた和也と、事の重大さに耐えきれず逃げた晴人。仲の良かった2人の決定的な違いは、心の強さだったのだと思う。仁藤とその親友・土屋を見た晴人は、「お前、いいなぁ。」と思わず呟いたそうだ。(本編では確認できないが、放送回の公式ブログにて仁藤役N氏の発言より確認。)


 突然だがここで、メインライターK氏のブログより、2012年10月1日の記事の言葉を引用する。

ウィザードに変身する晴人には「強い」というイメージがついているみたいなんですが、
彼は「強いフリをしている」というのが本当のところな気がします。
「男は『男という仮面』を被って男になる」という話を何かで聞いたことがあるんですが、
晴人も弱い自分を魔法使い(仮面ライダー)という仮面で隠し、
人を守るために強くあろうと空意地を張ってるんじゃないかと思うのです。

 まさしくこれは操真晴人の的を得ていると思った。上記の通り、魔法使いになるまでの彼は強いとは到底言えない上、自らがコヨミを励ました言葉である「今を受け入れて前を進む」ことが出来なかったのが分かる。この言葉は、戒めの言葉としてそっくりそのまま自分にも言い聞かせているのではないかと私は考えている。
 そもそも、彼はよく「みんなの希望を守る」と口にするが、みんなの希望とはなんだろうか?形のない漠然とした目標のように聞こえる。これも私の推測に過ぎないが、晴人は人々を“守る”のではなく、“人々を守る”という行為が彼にとって必要不可欠だったのではないだろうか?ファントム・レギオンによって魔法を失った時は動揺し、仲間に当たり散らした。「俺には魔法以外に出来ることが何にもない」と弱音をこぼした。
 何もなかった彼がサバトに巻き込まれた事により手に入れた魔法。その力で人々を守り、亡くなった両親に胸を張れるような“希望の魔法使い”であり続ける事が、操真晴人の生きる意味だったのではないか。


操真晴人とコヨミ

「魔法なんか使えなくたって、晴人は誰かの希望になれる。」
 そう言ったのは、コヨミだった。
 晴人とコヨミは恋人でも家族でもなかったが、サバトを生き残った二人の間にはそれ以上に特別な絆があった。同じ境遇というのは晴人の中でとても大きいようで、成れの果ては別ながらも同じいきさつでファントムになったソラ/グレムリンにも、一時的ではあるが同情しているほどだ。「コヨミへの態度に嘘がないのが晴人の一番人間らしいところ」とS氏も語っていたが、実際に彼女にだけは取り繕った冗談も言わないし、つねに優しかった。
 しかし、物語が賢者の石=コヨミに焦点が当たるにつれ、段々と明かされていく彼女の正体とサバトの目的。ゲート・西園寺のアンダーワールドで白い魔法使い/笛木がコヨミの父親だと知り、晴人は一人苦悩する。誰よりも彼の一番近くにいて、理解者であり守るべき存在だったコヨミ。敵か味方かも知れない笛木に苦悩しつつも彼女を預けたのは、“親”という存在の大きさを誰よりも知っていたからなのだと思う。
「俺なんかの命でコヨミが生き返るのなら、それはそれでありかもな。」これも、自分の命を大切にできない彼らしい一言である。
 しかしサバトには晴人たち魔法使いだけでなく、もっと多くの命が必要だった。仁藤の機転によりサバトは失敗に終わるが、笛木はあきらめない。娘を生き返らせることが私の希望だ、そのために何を犠牲にしても構わないと。そんな笛木に晴人は「俺はお前を止める。コヨミも絶対に救う!」と言い放ったが、結局その言葉の何一つ、彼は実行しえなかった。笛木はグレムリンに殺され、コヨミもまた、救えなかった。無力な晴人は泣くが、コヨミは笑う。「晴人が、最後の希望…。」という最期の言葉は、賢者の石を晴人に託すことで、誰かを救うことでしか生きられなかった彼に次の道を示してくれたのではないだろうか。
 コヨミを失った晴人の落ち込み方は尋常ではなかったが、彼は今度こそ前を向いた。両親や和也の時とは違う。コヨミの死を受け入れて、彼女の心を救うことで前に進もうと立ち上がった。ここに、彼の精神的な成長を窺える。最終話でグレムリンと対峙するまで表情を映さない演出は、彼の心理を効果的に映していた。最初で最後のパンチは暴走するグレムリンから賢者の石を取り戻し、石は指輪に変わる。それはホープリング。その名の通りその指輪は、晴人の最後の希望だった。


 すべてを終わらせた晴人は一人、旅に出る。仲間もそれぞれの道を行く。このラストについて、S氏はこう語る。
「結局、晴人は変われなかった。仲間を信じてはいるけれど、最後は自分だけしかいないという考え方に変わりはなくて、一人で旅立っていった。」
 彼の、コヨミの心を救う旅が始まるのである。





操真晴人の顛末

 大事なものは失ってから気付くというが、果たして晴人もそうだったのだろうか?
 守るべきものを失い、コヨミ自身ともいえるホープリングを誰も知らない場所に眠らせる。とても美しく終わったように見えるが、考えてみれば、本当は弱い晴人にそんなことが出来るはずもなかった。
 ファントム・オーガは黒いコヨミの姿を「お前が生み出した存在だ」と表現した。「違う、俺はコヨミを眠らせようとして…。」と愕然とする晴人に「けれどお前は手離さなかっただろう?」と言い放った。
そう、晴人は結局手放せなかった。劇中、指輪を置こうとやってきた海岸で遊ぶ人々を見て「ここじゃ静かに眠れないな。」とおどけていたが、行く先々でそうやって自分に言い訳をして指輪を持ち続けていたのだろう。“依存”と人は形容するかもしれないが、おそらくそれに近い感情を持っていた。空っぽの晴人に降りかかったサバト、手にした魔法と少女。この気持ちは恋でも愛でもないが、彼女だけは、特別だ。黒いコヨミが、私を殺して絶望するか、あるいは殺せず人々が死んでいく様を見て絶望するかどちらの覚悟をしてきたかと問えば、「どっちだと思う?」と、敵ながらにとても優しい声色で話しかけた。
 白い魔法使い/黒いコヨミとの戦いで、彼は自分の心情を吐露した。サバトで生き残ったのが自分だけではなかったことが、どれだけ救いになったのか。コヨミは自分に救われたと言ったが、自分もどれだけコヨミに救われたのか。自らの気持ちと弱音をこんなにも感情を露わにして叫ぶ彼は、おそらく初めてだ。正気に戻ったコヨミも続ける。どんな姿になっても、私は晴人を信じ続けている、と。


操真晴人の希望

晴人はコヨミに本当に伝えたかったことを言えた。コヨミも、それに応えた。そして彼の手元にホープリングが戻る。物語も円満に終わる……と思いきや、隙を突きオーガがレギオンの力を使って晴人のアンダーワールドに飛び込んでしまう。
しかし、劇中後輪島へ弟子入りしていた瞬平が、晴人のためにと作った指輪が奇跡をもたらすのだ。そうして、操真晴人が、彼自身のアンダーワールドへと飛び込んだ。レギオンを倒すため仁藤が飛び込んで以来の、操真晴人のアンダーワールドである。


そこはもう、両親が死んだ病室という悲しい思い出ではなかった。彼の心は、「コヨミ」という希望であふれていた。
 初めて会ったあのサバトの日。“デート”と称して彼女を連れ出し、笑顔をプレゼントした日。家族を亡くし友人も無くし、からっぽだった晴人にとって全てがかけがえのない、忘れられない、幸せに救われた瞬間。
「俺の希望があふれる世界で、俺が負けるわけないんだよ!」
彼の一撃は、最後のファントム・オーガを消し去った。


 そして現実世界へ帰る前に、晴人は思い出の中の面影堂へと立ち寄る。そこにはコヨミが、凜子が、瞬平が、仁藤が、なんてことない日常をかたどっていた。仲間がいる何でもない幸せこそが、今の彼のアンダーワールド。そうして彼は、コヨミに話しかける。

「これ、コヨミが、持っていて。」

 おそらくコヨミが一番安心するだろうこの場所で、彼はやっと、指輪を手離すことが出来たのだった。








最後に

 弱さを隠して仮面をかぶり、強がって他人を拒絶する。乾巧、門矢士に並んで操真晴人は私の大好きな主人公になった。設定自体も素晴らしいが、それをさらに成長させたS氏の役者魂に、拍手を送る。
 彼にはぜひ、「いつかまたみんなで集まって、僕が主演・監督の大人向けのウィザードを作りたいんです。」という夢を叶えてほしい。その時をずっと、待っている。